「品詞」とは語の用法

「waterの品詞は何か」と尋ねられると、ほとんどの人が「名詞」だと答えるに違いない。だが、これは間違った認識である。waterイコール「名詞」なのではない。

日本語では「水(みず)」は、あくまでも名詞である。「水(みず)る」「水(みず)った」と動詞になることは決してない。しかし、英語のwaterは、名詞であるだけではない。動詞(水をかける、水を飲む)としても用いることができるのである。すなわち、英単語の品詞とは、それぞれの語の用法(用い方)だと思ってよい。

用法の広さは、語によって違う。theやatのように、ひとつの用法しか持たない語もあるが、多くは複数の用法を持つ。

たとえば、chairには名詞用法以外に動詞用法がある。walkにも動詞用法と名詞用法がある。manやdeskといった名詞用法しか持たないように見える語にも動詞用法がある。roundには形容詞用法のほかに、動詞用法も副詞用法も名詞用法も前置詞用法もある。ほぼすべての品詞をカバーするのである。

名詞

名詞(noun)は、「もの」を表現する。ここでいう「もの」とは、「机」「椅子」「雲」などという実際に存在する具象物のほかに、「正義」「悪」「愛」「学問」といった抽象的概念も含まれる。

主語、目的語、補語にあたる語が名詞

上に述べたように、名詞という決まった語があるのではない。時と場合に応じて、語が「名詞」として用いられると考えなければならない。

構文機能の観点からみれば、センテンスのなかで主語、目的語、補語として機能する語が名詞である[1]。もう一度、確認しておく。「名詞が、主語/目的語/補語になる」のではない。「主語/目的語/補語が、名詞」なのである。

かたちや位置から名詞を見つける基準

ところで、語のかたちや位置から、その語が名詞かどうかを(ある程度だが)判別することができる。その基準としては、次のものが考えられる。

1.「決定詞」直後に置かれた語は名詞

「決定詞」(determiner)とは、新しい文法において用いられている文法的な概念である。

具体的には、伝統文法の分類における冠詞(a, the)、指示代名詞(this, that, its, these, those)、代名詞の所有格(my, your, his, her, our, their, whose, which)、数量形容詞(both, all, any, some, either, no, neither, each, every, enough, few, little, several, many, much, more, most)、前置詞が「決定詞」にあたるものである。

決定詞の直後に置かれた語は、どんなかたちをしていても、それは名詞である。名詞の前にa, the, his, that, its, all, any, someなどがつくのではない。これらの語の後につく語が名詞なのである。

決定詞自身は、かたちが決まっている。したがって、センテンスのなかで何が決定詞なのかは、一目でわかる。じつは、私たちが英文を読んでいるときには、語順と、この決定詞とを手掛かりにして、構文を読みとっているのである。

英語ネイティブは、生まれてからの長いあいだの英語運用を通じて、この構文読み取りの感覚を無意識に習得している。だが、英語ノンネイティブである私たちは、そうはいかない。この語順とこの決定詞とを手掛かりにした構文の読み能力を、私たちは意識的に習得していかなければならないのである。

2.主語/目的語は名詞

主語/目的語は、たとえどんなかたちをしていても、名詞である。名詞が主語/目的語になるのではない。主語/目的語が名詞である。

3.前置詞の直後に置かれた語は名詞

前置詞の直後に置かれた語は、たとえどんなかたちをしていても、名詞である。前置詞の後ろに置かれる語は、前置詞の目的語である。目的語であるから、2の「主語と目的語にあたる語は名詞」にしたがって、それは名詞である。

4.語尾のかたちが-ness, -tion, -ityなどであれば、名詞の可能性が高い

語尾のかたちが-ness, -tion, -ity, ~ance(shyness, additionなど)であれば、その語は、名詞である可能性が高い。ただし、witnessやfunctionといった例外もあるので、注意が必要である。

5.語尾のかたちが-s, -esであれば、名詞の可能性がある

語尾のかたちが-s, -es(soups, churchesなど)であれば、名詞である可能性が高くなる。ただし、述語動詞でも現在形三人称単数が-s, -esの語尾のかたちをとるので、-s, -esのかたちだからといって、つねに名詞であるわけではない。

6.大文字で始まる場合は名詞

大文字ではじめるのは固有名詞としての表記の約束であるから、それは名詞である。

動詞

動詞(verb)は、「こと」を表現する。ここでいう「こと」には、「行為」(~をする)、「変化」(~になる)、「状態」(~である)などが含まれる。

 

[1] 補語は形容詞の場合もある。

​(続く)

「心の英文法」
(サンプル原稿)

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