田中茂範の『表現英文法』

田中茂範さんの『表現英文法』は、私の一押しの英文法書のひとつである。では、なぜ一押しなのか。 それは、『表現英文法』と他の文法書とは、そもそも「英文法」に立ち向かう基本姿勢、そして発想の根幹が違うからだ。では、どう違うのか。長くなるが、『表現英文法』自体から引用する。 ☆☆☆ (引用1) 【「わかる」と「使える」を意識した「表現英文法」】 ここで展開する英文法は、日本人学習者が英語を習得するための英文法です。それは、「わかる」と「使える」を意識した英文法です。前述したように、そうした英文法のことを本書では「表現英文法」と呼びます。すべてのやりとりは表現を通して行われます。そして、本来、文法力は状況に応じて適切な文(表現)を作り出す力と、差し出された表現から意味を構成する力の中核になるものです。別の言い方をすれば、言葉で表現することで事態を構成するというのが「話す・書く」ということであり、言葉から事態を構成するということが「聞く・読む」ということです。 (『表現英文法[増補改訂版]』p.18) (引用2) 【文法の全体像:名詞的世界・動詞的世界・副詞的世界】 これまでの英文法学習では、例えば、関係代名詞、分詞構文、不定詞などについて学ぶものの、それぞれがどういうふうに有機的に相互連関しているかを示すことはありませんでした。このことは、断片的な知識はあっても、それが総合的な英文法力になかなかつながらないという問題と関連しています。 本書では、世界のとらえ方として、モノの集合としてのモノ的世界、出来事(コト)を表すコト的世界、そして、その出来事をとりまく状況としての状況世界の3つを想

高校の授業にイーオンやECCの英会話講師が入ってくる

4/26の日経新聞の記事に次のような話が載った。大学入試に英会話が導入されるということで、高校の授業にイーオンやECCの英会話講師が入ってくる、というお話だ。 「英会話学校や学習塾で高校向けの事業を本格化する動きが相次ぐ。ECC(大阪市)は5月から出前授業を始める。イーオン(東京・新宿)は首都圏で手掛けてきた教員研修を全国に広げる。2020年度に適用される新たな大学入試制度では英会話能力も問う。ノウハウや英語が堪能な教員が足りない高校も多いとみられ、外部サービスの利用が広がりそうだ。」 公教育での外部「サービス」の利用! 将来を担う子供たちを前にして教壇に立つ教員は、病人を前にする医者と同じように、ある意味で特別な存在でなければならない。だからこそ、医師免許があり教員免許がある。たしかに理想論ではあるが、その理想論なくして教育など成立しない。 そこに、目先の実利のための「サービス」である英会話学校を入れようという発想そのものが、すでに教育ではない。英会話学校が悪いなどとはいっていない。当然ながらそれはビジネスとして成立してよい。ただ、それと公教育とを区別できないことが、教育として「死んでいる」ということだ。 それにしても、ここまでコケにされても高校の現役英語教師たちが自分たちのために子供たちの未来のために闘わないのかが、私には理解できない。

松任谷由美の「紙ヒコーキ」「春よ、来い」「海を見ていた午後」の歌詞を英語に

今日は松任谷由美の歌の歌詞を3つ取り上げます。まず1つめは「紙ヒコーキ」から。私はユーミンの歌のなかでこの歌が一番好きです。 とりとめのない気ままなものに どうしてこんなにひかれるのだろう さて英語です。 I wonder why I am so fascinated with something rambling and unbound. fascinated with は、「~に魅了される」 rambling は「ぶらぶら歩く、とりとめのない」 unbound は「縛られていない」。 unbind(縛りをとく)の過去分詞で形容詞として使われます。 ☆☆☆ 2つめは「春よ、来い」のさびの部分。 この歌は東日本大震災のチャリティーイベントなどでもよく歌われたようです。 春よ 遠き春よ 瞳閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする 今回はかなりセンチメンタルに訳してみました。 Oh, Spring you are too far away. You loved me once from the bottom of your heart When I close my eyes I still hear your voice. Oh, what a missing tone it is! 直訳してみます。 おお、春よ、お前ははるか遠くにいってしまった。 かつて、お前は私を心から愛してくれた。 いまも、目を閉じると、私はお前の声がきこえる。 おお、なんというなつかしき響き! ☆☆☆ 最後は「海を見ていた午後」のさびの部分。 ソーダ水のなかを貨物船がとおる ちいさなア

WikipediaにSimple Englishバージョンあり

WikipediaにSimple Englishバージョン(https://simple.wikipedia.org/wiki/Main_Page)があることをご存じでしょうか。 世界の誰にでもわかる国際英語で世界のあらゆる項目を紹介するという趣旨。なお現在のトップページではなぜかGeisha/Geikoが紹介されています。 Wikiですから、私たちがSimple Englishで記事を書いてアップすることは、もちろんOK。みんなで日本に関する項目をどんどんとアップしていきましょう。

プレジテントオンライン記事「専門家が直言「TOEICが日本を滅ぼす」ーこの国の「言語教育」が迎える末路」が、とても面白い

猪浦道夫さんという方が書いたプレジテントオンラインの記事「専門家が直言「TOEICが日本を滅ぼす」ーこの国の「言語教育」が迎える末路」が、とても面白い。 そのなかの主張のひとつである「日本語教育と外国語教育をセットで考え直すべし」という意見は、私と非常に似ているので、びっくり。お仲間さんが、ほかにもいるんですね。その点は、嬉しい。 ただし、もうひとつの「TOEICを目的とした教育で「母国語力」が低下している」という主張は、完全に無理スジ。 TOEICを目的とした教育をする→日本語力が低下する、という図式は非論理的。「〇〇したからといって、××とはかぎらないのではないか」という、野矢茂樹さんの論理チェックに簡単にひっかかる。 この方には『TOEIC亡国論』という大仰なタイトルの著書があるようだ。 たしかに、この手のセンセーショナルな物言い、人々のルサンチマンを刺激する何かを書かないと、いまの時代には、本としては売れないのかもしれない。 だが敢えて厳しいことをいえば、こうした非論理的かつセンセーショナルな物言いこそが、日本語力の低下の一例ではないのか。

成瀬塾通信 no.16 前置詞(1):前置詞は動詞の一種

前置詞には、従来の文法では指摘されていない、非常に重要な事実がある。すなわち、前置詞とはじつは動詞の一種である。 前置詞(preposition)の「前置」とは「目的語の前に置かれる」という意味である。だが、考えてみてほしい。動詞もまた目的語の前に置かれる「前置」詞(preposition)なのである。 別の言い方をすれば、前置詞とは、主に動詞の現在分詞形から派生して、意味的には(おもに)空間的イメージ認知に特化し、用法としては前置詞用法のみに特化した、「特殊」動詞のことである。 前置詞の成立過程をみても、動詞から進化してきたものが非常に多い。たとえば、between, across, during, pastなどにはbe動詞やcross, dure, passといった動詞のなごりがいまでも感じられる。 また、concerning, regarding, excepting、includingなどは現在では文法範疇として現在分詞ではなく前置詞としてすでに認知されてはいるものの、現在分詞としてのニュアンスがまだかなり残されている。 したがって私たちが英語を読んだり書いたりするときには、前置詞を「特殊」動詞として認識しなければならない。 たとえば、前置詞句と分詞句とは同じ認識のもとに理解すべきである。どちらもSVO節のSubjectが省かれた表現である。 【機能文法での前置詞の位置づけ】 従来の文法理論を堅く信じる人々のなかには、前置詞が「特殊」動詞であるといった「心の英文法」の主張には根拠がなく荒唐無稽であるとみなす人もいるかも知れない。あるいは、従来学んできた文法からはあまりに

「川内がボストンマラソンで優勝 瀬古以来、31年ぶり 」を英語にすると

英語では、こんなふうに報じられています。 Yuki Kawauchi overcame 2017 winner Geoffrey Kirui to become the first Japanese winner since 1987, closing hard in the final two miles to earn the biggest accomplishment of his running career. (川内優輝が2017年優勝のジェフリー・キルイを振り切って優勝。日本人ランナーの優勝は1987年以来。最後の2マイルを激走し、マラソンランナーとしてのキャリアでの最高の結果を手にした。) closing hard = 最後を締める earn the accomplishment = 結果を得る 上記のような表現は、ネイティブ英語としてはしゃれてはいますが、私たちのような国際英語人が使うべきものではないことに注意。もっとシンプル、簡潔にいうべき。 いずれにせよ、埼玉の地方公務員ランナー、おめでとう!

成瀬塾通信 no.11 読者の方々からのコメントをご紹介

成瀬塾通信の発行もno.10に到達。ひとくぎりです。ここまでの通信内容に関して、読んでくださっている方々から、いくつかのコメントをいただきました。それぞれにとても楽しく、興味深く、そして勉強になるコメントばかりです。コメントをお送りいただいた皆さん、本当にありがとうございます。 今回のno.11では、皆さんからいただいたコメントのなかから、いくつかのコメントをピックアップしてご紹介させていただきます。直近のものから、順にさかのぼっていきます。 ☆☆☆ 「成瀬塾通信 no.9 英語学習はまず「読み書き」から」に関しては、次のようなコメントをいただきました。 まず1つめ。ロンドンなど海外での生活が長く、現在はシンガポールにお住いの方からのコメントです。 海外に暮らして常日頃感じるのは、英語をペラペラと話すことではなく、英語で自分の考えをきちんと伝えることが重要だということです。話していて面白い人、話題が広がる人というのは、やはり知性や教養、経験に裏打ちされた会話を展開できる人であり、non nativeの人がたとえゆっくりであっても中身のある話を論理的に話すとき、国籍、民族、native、non nativeを問わず、皆、会話に引き込まれるものです。この知性や教養というのは、英会話力とはまったく別物であり、その根っこは読み書きの力と同じだ、と世界中の人が暮らすこの地で改めて実感する日々です。また、本当に頭のいいnativeの人の話は、端的かつ論理的なので、どんなに早口であっても極めて理解しやすい、つまりヒアリング力は実はあまり必要としません。 実際に長く海外生活をされている方から実

成瀬塾通信 no.10 【日英翻訳1日1題】 「それって、大人の都合なんじゃないのぉ~~」「オレの人生はつまらなくなんかない!家族のいる幸せを、あんたたちにもわけてやりたいくらいだぜ」

今回は、ごぞんじ、「クレヨンしんちゃん」からの二連発。まず一発目。 「それって、大人の都合なんじゃないのぉ~~」 もし本当に子供からこういわれると、かなり心臓に悪いよね。さて、英語です。 It's just for the sake of grown-ups, isn’t it? うーん、オリジナルほどの迫力はないが、それでもグサッとくる。ところで、しんちゃんって悪がきだけど、いつも120%で頑張ってるよね。おら~、どっちかってゆーと、きらいじゃねぇ~~。 ☆☆☆ 二発目です。 「オレの人生はつまらなくなんかない!家族のいる幸せを、あんたたちにもわけてやりたいくらいだぜ」 映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、しんちゃんの父、ひろしのいうセリフです。 この『オトナ帝国の逆襲』は、オトナたちが子どものころの懐かしい匂いの虜になって架空の昔の世界に閉じこもってしまい、しんちゃんたちが本当の未来を取り戻すというお話。名作です。 さて英語です。 My life is never boring. Absolutely never! I would rather give you part of the happiness of being with family. boringは「退屈な、つまらない」。trifling (くだらない、取るに足りない)、worthless(価値がない)などの強烈な語を使うのもよいでしょう。 Absolutely never! は「絶対にそうじゃない!」。きわめて強い否定表現です。絶対に否定したいときの切り札表現として使ってくださ

「大谷翔平は、どうみても地球の人間ではない」

大リーグにいったとたんに3戦連続でホームランをかっとばし、こんどは7回途中までパーフェクトピッチング!あきれ返って、もはやコメントできないですよね。 それは米国人も同じ。あるブロガーはclearly not this planet(どうみたって宇宙人だ)とのコメントに続けて、次の

【今日の話題】 外国人観光客が増えているのは、新"VIP"のおかげ?

外国人観光客が増えていますね。日本政府観光局によると2017年は2869万1000人。毎年大幅な伸びを示しているそうです。 世界中からの観光客が伸びていますが、そのなかでも伸びが特に著しいのがベトナム、インドネシア、フィリピンの3カ国。頭文字をとって"VIP"と呼ばれているそうです。 VIPとはうまく名付けたものだと思ってサイトを検索していると、ひっかかったのがKorean Timesの記事。2013年10月にアップされていますので、この言い方が5年ほど前にはすでにあったことがわかります。 また韓国では朴槿恵前大統領がVIP招致のためにこの時期からトップ外交を積極的に展開していたこともわかります。日本の観光新興策は韓国からかなり遅れてのスタートでした。 「観光」は平和産業の代表格です。また日本は石油などの資源には恵まれないものの観光資源には非常に恵まれた国です。 したがって経済政策的にみても観光産業を伸ばすことは日本にとって最良の選択肢だと思います。2020年の東京オリンピックに向けて日本の取り組みがさらにパワーアップされるといいですね。

【日本語ワンポイントレッスン】 「~した」「~してしまった」「~したところだ」「~したばかりだ」は、どう違う?

あなたが日本語を勉強中の留学生と待ち合わせをしているとします。ところが待ち合わせ時間に少し遅れてしまいました。到着した時にその留学生に「遅れてすみません」といったところ、彼/彼女はにっこりと笑って、次のように答えました。 1. 「ついさっき、来ました。」 2. 「ついさっき、来て

Q: achieve とresultの違いを教えてください。

上は、ある生徒さんからの質問です。それに対する答えが以下。 A: では、いつものようにOxford Thesaurusをみてみましょう。いくつからの語の意味を対比的に調べるときには、Dictionaryではなく、このようにThesaurusを使います。 (語のコアイメージだけなく)語のネットワーク、つまり「差異」こそが意味の意味であるという構造主義的考えも支持している私としては、DictionaryよりもThesaurusをつねに重視します。 ある人の脳内の語ネットワーク構造こそがその人の語彙力であり、その精緻化=語彙力強化だと考えます。 まず、achieveです。SYNONYMは attain, reach, arrive at realize, carry off, bring off, pull off, bring about, accomplish, carry through, fulfil, execute, perform, engineer, carry out, bring to fruition, conclude, complete, finish, consummate earn, win, gain, find, establish, acquire, obtain, procure, come by, get, secure, clinch, seize, wrest, hook, net ANTONYM:なし つぎに、動詞用法でのresultです。SYNONYMは result fromが follow, ensue,

「春になれば すがこもとけて どじょっこだの ふなっこだの 夜が明けたと 思うべな」

「どじょっこ、ふなっこ」(作詞 豊口清志 作曲 岡本敏明)の出だしです。秋田の民謡をもとにしてつくられた童謡です。「すがこ」は秋田弁で「氷」のこと。ただし本来の発音は「しがこ」。東北弁は「し」と「す」の区別がそれほど明確ではないために、こうなったとのことです。 さて英語です。今回は「すがこ」(氷)の部分に英語のiceではなくアイルランド語のoighirという語を使ってみました。oighir の発音ですが、インターネットで聴くかぎり「アイズ」に近く聞こえました。英語とはまったく違う印象です。 When spring has come and oighir begins to melt, fish and loaches in streams suppose the dawn has arrived. 「英語の方言はあるのですか」ときかれることがあります。ありますが、日本語の方言ほどのバラエティはありません。日本語の場合、津軽弁と鹿児島弁ではまるで違う言語のようです。その違いはイタリア語とスペイン語の違いにも匹敵すると思えるほど。英語の方言では、それほどの差はありません。 ところで私たちがイギリスと呼んでいる国では、じつは英語以外の言葉も話されています。アイルランド語であり、ウェールズ語です。ここではそのひとつであるアイルランド語を秋田弁の翻訳に利用してみたわけです。oighirというアイルランド語を多くのイギリス人は知らないでしょう。その意味でも「すがこ」の訳語にふさわしいのではないかと思います。 fish and loaches in streamsは「小川のドジョウや小魚」。

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