私の翻訳観

私が提唱している「心の翻訳」モデルでは、「等価」という概念の上位概念として「価値」を置いている。なお「等価」の下位概念としてはさまざまなもの(表現的等価、認識的等価、情報的等価、他)があると想定し、また「価値」の下位概念としてもさまざまなもの(社会的価値、個人的価値、歴史的価値、他)があると想定している。

「心の翻訳」モデルでの最終目標は「新しい、より大きな価値を生み出す」ことにある。「等価」を高めようとすることは、この目標の達成にとって有用なことが多く、したがって「心の翻訳」モデルは「等価」追求を目標とする既存翻訳モデルと対立するものではなく、それを包含するものである。ただし、「等価」を高めようとすることが「心の翻訳」モデルの目標達成にとって有用でないことや有害であるケースも多々あり、その場合には、「心の翻訳」モデルでは「等価」という概念にはこだわらない。これは従来の「翻訳」の概念をはみ出してしまうことを意味する。

言葉における「価値」においては、経済における「マネー」のようなかたちでの一元化は不可能であると「心の翻訳」モデルは規定する(経済「価値」をマネーで一元化することも本来的には不可能である)。したがって、「心の翻訳」モデルが目指すべき「価値」は多種多様なかたちをとり、それが多種多様な訳文を生み出すことにつながる。こうした考え方からして「心の翻訳」の研究は必然的に近代科学的な探究とはならない。

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