January 7, 2019

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September 28, 2017

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「ネイティブチェック」信仰を抜け出す――理論、手法そして実践

November 29, 2017

[JTF 翻訳祭スピーチ原稿]

 

これから、「ネイティブチェック信仰を抜け出す」という、かなりモノ騒がせなタイトルのもとにお話をさせていただきます。といっても、私はここで「英米偏重主義を打破せよ!」とか「日本人の誇りを取り戻せ!」などといったことをお話するつもりではありません。

 

また、ネイティブチェックはまったく不必要だ、といった極論を展開するつもりでもありません。ここで取り上げたいのは、もっと現実的でビジネスライクな話です。

 

現在の翻訳業界では、翻訳プロジェクトのなかでのネイティブチェックの意義や機能や成果が十分に検討されていません。多くの翻訳会社は、体系的で合理的な裏付けをもとにしてネイティブチェックを行っているわけではなく、それがないと品質が不安だから、という漠然とした理由でネイティブチェックを行っています。こうした仕事のあり方が、品質管理での無駄を生み出し、それが翻訳会社の経営力の低下や翻訳者に対する翻訳料の引き下げにつながっています。

 

翻訳ビジネスで最も削ってはいけないのは、翻訳者に対する報酬です。翻訳会社の生命線は、優秀な翻訳者の確保にあるからです。翻訳者への報酬の引き下げは、その生命線を断ち切ることになります。にもかかわらず、現在の翻訳会社の多くは翻訳者に対する報酬を引き下げ続けています。なかにはセブンイレブンの時給よりも低いのではないかと思われるような翻訳料を設定している翻訳会社もあります。翻訳会社側からは、競争が激化しているから、販売単価が下がっているからといったさまざまな言い分があるでしょう。しかしながら優秀な翻訳者を失ってしまっては、そもそも市場競争には勝てません。優秀な馬がいなければ競馬に勝てないのと同じです。

 

したがってこれからはビジネスモデルそのものを改革して、翻訳者への報酬を維持しながらも安定的な利益を確保できる道を切り開かなければなりません。そのために翻訳会社が行えることは、いくつもあります。そのひとつが、ネイティブチェックの見直しです。ネイティブチェックを見直すことで翻訳プロジェクトの損益分岐点は確実に下がります。

 

具体的にネイティブチェックをどのように改善していけばよいのでしょうか。私は次の3点を改善する必要があると考えます。

 

第1は、「ネイティブチェック基準の確立」です。すべてのチェック工程では、誰が何をどのようにチェックするのかを明確に定めておかなければなりません。これはネイティブチェックでも同じです。

 

重要なことは、チェック基準となるべきモデル例文やチェック項目を用意しておき、それをベースにチェックをかけることです。チェック項目とプロセスをきめ細かに設定して管理することにより、ネイティブチェックにかかる無駄なコストと時間を減らすことができます。

 

第2は、「ネイティブチェッカーの評価」です。一口にネイティブチェッカーといっても、その能力は人によってさまざまです。したがって、ネイティブチェッカーの能力を適確に測ることは、非常に重要です。ところが実際にはネイティブチェッカーの能力評価システムはまだ十分には開発されていません。このことが翻訳プロジェクトでの無駄なコストに結びついています。

 

この状況を打破するには、まずネイティブチェックに対する考え方を根本から変えなければなりません。最近オンラインでの英文チェックサービスが非常に使いやすくなりました。ネットを少し検索するだけでも、世界中の英文チェックサービス会社が見つかります。これらの外部リソースにネイティブチェックをアウトソースすることでネイティブチェックのコストが明確化され、品質アップとコストダウンの方向性が見えてきます。

 

外部リソースを活用する際、その土台として必要となるのが、ネイティブチェックに対する評価システムの確立です。ネイティブチェック機能を社内に抱えるのか、それとも社外にアウトソースするのかが問題の本質なのではありません。ネイティブチェックの最も効率的なシステムとはどのようなものであり、それを確立するには何をするべきかを根底から考えなおすことが問題の本質です。

 

そして第3が、国際英語プロジェクトでのネイティブチェックの削除です。現在は、すべての日英翻訳プロジェクトに対してネイティブチェックが組み込まれているのが一般的です。しかしながら、実際の世界での英語使用をみてみますと、国際英語としての英語使用が、世界の英語使用のなかでは圧倒的多数です。

 

たとえば、アジアでの国際会議やビジネスでは、ほぼ全員が英語ノンネイティブという状況が普通です。そこで用いられる英語は、すべて国際英語であります。そうした状況で用いられる英語に対してまで、わざわざネイティブチェックを行うことに、果たして意味があるのでしょうか。

 

英語ノンネイティブが大半を占める国際会議やビジネス文書であれば、もちろんそれが何人であれ優秀なチェッカーによるチェックが入っていることが大前提ではありますが、翻訳プロジェクトでネイティブチェックを省くことは可能です。

 

ただし実際には、どのような翻訳プロジェクトであれ、ネイティブチェックを省くとなれば、それを行なわずとも顧客ニーズが十分に満たされることが担保されなければなりません。その担保方法のひとつとして提案したいのが、ノンネイティブ英語ユーザーによるモニタリングシステムです。具体的には、世界のさまざまな国や文化に属するモニターをプールしておいて翻訳テキストを評価してもらうという仕組みです。モニター対象としては留学生、ビジネスマン、研究者などが考えられます。こうしたモニタリングシステムは品質管理手法として既に多くのビジネス分野で活用されています。モニタリングシステムの構築は単独の翻訳会社では手に余るものでしょうから、日本翻訳連盟のような業界団体が音頭をとって日本の翻訳業界全体で利用できる共有システムを構築することを、強く希望したいと思います。

 

国際社会の共通語である英語は、もはや英語ネイティブだけの所有物ではありません。世界のすべての人々の共有物です。国際英語の世界では、私たち全員が国際英語の「ネイティブ」です。そして私たちが目指すべき国際英語テキストとは、世界の誰にもわかりやすい正確で良質の国際英語テキストです。

 

国際英語の翻訳において、そのような良質の国際英語テキストをつくりだすサポートをすることが、翻訳プロフェッショナルとして果たすべき使命であると、私は考えます。そしてその使命を果たすためには、ネイティブチェックに代わる方法とシステムを、私たちの手で開発していかなければなりません。

 

これは単なる理念や理想論ではありません。私たち翻訳関係者の仕事のあり方や収入に直結する現実論であり、私たちはそれに真摯に取り組まなければなりません。皆さんにも、これを機会にぜひネイティブチェックに代わる方法とシステムについてお考えいただければ、たいへんに嬉しく思います。なかでも日本翻訳連盟の方々には、ノンネイティブ英語ユーザーによるモニタリングシステムの開発を御検討いただくことを強くお願いして、このスピーチを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

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