「英文和訳/和文英訳+編集」モデルをベースとしている限り、あらゆる領域の翻訳作業において、AI翻訳は人間翻訳を間違いなく凌駕する

人工知能(AI)翻訳の本質は、「英文和訳/和文英訳+編集」モデルを用いた翻訳作業を人間とは比較にならないほどの精度とスピードで行うことができるという点にある。たとえAI翻訳が進化しても人間にしかできない翻訳の仕事は残るといった意見も耳にするが、もしそうした論者がいうところの「人間にしかできない翻訳」のベースとなる翻訳モデルが「英文和訳/和文英訳+編集」モデルであるのだとすれば、その論は根底的に間違っている。

「英文和訳/和文英訳+編集」モデルをベースとしている限り、あらゆる領域の翻訳作業において、AI翻訳は人間翻訳を間違いなく凌駕する。産業翻訳に限らず、出版翻訳でも、あるいは文芸翻訳でさえも同じことである。このままであれば、あと10年も経たずして産業翻訳の大半は人間翻訳ではなくAI翻訳が担うことになるだろう。文芸翻訳を含む出版翻訳でも、産業翻訳に追随するようにして人間翻訳がAI翻訳に置き替えられていくだろう。なぜならば、そうしなければ翻訳エージェントも出版社も生き残れないからである。これは冷徹なビジネス原理である。

こうした環境下で、もしも人間翻訳が生き残ることができるとすれば、それは、言葉と言葉をつなぐ「英文和訳/和文英訳+編集」モデルを捨て去り、人間の心と心をつなぐ新たな翻訳モデルを採用する以外に道はない。私が開発した「心の翻訳」モデルはそうしたモデルの1つであるが、それだけを利用する必要はなく、心と心をつなぐモデルであれば、どのような翻訳モデルであってもよい。

人間翻訳が生き残るということは、日本人の心が生き残るということであり、さらにいえば、人間の心が生き残るということだ。ジョージ・オーウェルが1949年に書いた小説『1984』では「ビッグブラザー」が人々の心を支配する全体国家像が描かれているが、2018年以降に生きる私たちにとっての「ビッグブラザー」とは、AIであるのかも知れない。そのなかで、人間が人間として生きていくためのひとつのシンボル的行為が人間翻訳なのだと私は考える。だからこそ、なんとしてでも残したい。

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