第1回日本語文法講座のまとめ

第1回授業では日本語「文法」のベースとなる「日本語の世界」をご紹介しました。以下、簡単にまとめておきます。

最初に「100字で思考をまとめる」トレーニングをしました。ポイントは「文章量&思考のまとめかた」。あるテーマをまとめるために必要な標準的な文章量は200字程度。それを100字程度でまとめるには技量が必要。その技量には「構造」と「表現」あり。この2つの側面から書くことを分析、理解し、技量をひとつずつ着実に習得していくことがプロ翻訳者には重要です(この段落は約170字)。

次に日本語の最大の特徴のひとつである「モダリティ」についてのトレーニングをしました。文章が表現する内容には「思考」(命題)のほかに「対事的モダリティ」(判断・態度)と「対人的モダリティ」(伝達)があります。日本語と英語の本質的かつ決定的な違いは、英語の世界ではモダリティ表現が基本的に「任意的」(あってもなくてもよい)であるのに対して、日本語の世界ではモダリティ表現は「義務的」(必ずなければならない)という点です。

その例として「吾輩は猫である。」などの例文を示して説明をしました。トレーニングでは、アメリカの学生の企業向けの英文レターを訳しました。訳してみると、英語の文章と日本語の文章とのモダリティ表現の違いが明確に現れました。

学生の書いた英文にはモダリティ表現はほとんど含まれていませんが、英語の世界ではモダリティ表現を含まないことがニュートラルな表現なので、特に問題とはなりません。

しかしながら、それをモダリティ表現のない日本語文にしてしまうと(程度の差はあれ)必ず無礼な表現になります。なぜなら、日本語の世界ではモダリティ表現は義務的であるために、それが表現されないということは「表現しない=無礼」という表現になるのです。したがって、この場合の「直訳」は「誤訳」です。

翻訳の目的は、それぞれのニーズを満たす「新たな価値」をできるだけ多く生み出すことにあります。言葉と言葉、あるいはその背後にある情報と情報をつないで、その「等価性」(equivalence)をできるだけ高めること(これが従来の翻訳論の基盤です)は、新たな価値を生み出すうえでのひとつの重要な手段です。しかし、それがすべてではありません。

なぜなら、日本語の世界と英語の世界とでは本質的に「等価にはできない」部分、「等価にすることに固執すると肝心の価値向上が図れない」部分が非常に多くあるからです。そのことを前回の授業で実感していただけたのであれば講師としてはたいへんに嬉しいです。

次の授業では構文(統語論)を一緒に考えましょう。中心として取り上げるのは、「展叙」「統叙」「再展叙」「陳述」という日本語独自の思考の流れの表現、それから、「は」「の」などの助詞が表す日本語人の心象風景です。

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