成瀬塾通信 no.32 英語の語彙力を鍛える (2) 補遺版2 まる暗記には「エピソード記憶」を利用する

「英語の語彙力を鍛える(2)」の本論では、英語初心者のための英語語彙の学習について論じた。一言でいってしまえば、最初の1500語はとにかく「まる暗記」しなさい、ということだ。ただし英語と日本語を一対一対応させては絶対にダメ。そのためには例文で覚えなければいけない、その例文も英文和訳の日本語文と一対一対応させてはいけない、ということである。

さてここからは、その「まる暗記」の方法についての話である。

脳科学者は記憶をさまざまなタイプに分類しているが、なかでも最も記憶として長く強く定着しやすいのは「エピソード記憶」だそうである。なんらかの出来事(エピソード)、それも強烈な印象を心に刻み込むエピソードといっしょに覚えた記憶は、いつまでも残るのだそうだ。常識的に考えても、これは納得できる。

とすれば、強烈な印象を心に刻み込むエピソードを人為的につくりだし、その場で英語を覚えていく、という学習方法が考えられる。教育現場での一例は「暗唱コンクール」の開催だろう。覚えてきた英文をみんなの前で披露するというのは、まさに「心に刻み込まれるエピソード」のはずだ。

たとえば私が高校の英語教師をしていたときには(もう30年以上も前だが)、授業の最初に「ミニミニ暗唱コンクール」を毎回実施していた。前回に習った英文を暗記して、それをみんなの前で披露するのだ。毎回数人が指名されるのだが、誰が当てられるかはその時までわからないので、クラス全員がその前の休み時間に必死で覚えていたようだ。

暗唱がよくできた生徒には暗唱が終わった時点で私がExcellentの札をぱっと差し上げるのだが、そうすると期せずしてクラス全員から大拍手が起こったものである。当時はこれが「エピソード記憶」強化学習とは気づかずにおこなっていたのだが、なにしろ非常に効果的であった。あるとき、卒業生の一人がやってきて、成瀬先生の講義内容は何も覚えていないが、あの暗唱コンクールだけは鮮明に覚えているし、とても役に立ったとのコメントをしてくれた。前半部分が余計なコメントではあるが、後半部分は非常にうれしいコメントであった。

こうした暗唱コンクールをもっと大々的にして学校全体や塾全体をまきこみ、優勝、準優勝なども決めれば、さらにエピソードとしての場としては盛り上がるのではないかと思う。中学・高校だけでなく塾などでも活用できる優れた学習方法であろう。あるいは職場や家庭での英語暗唱コンクールというのも可能だろう。たとえば飲食店のスタッフには今後は外国人客向けの簡単な英語表現での受け答えが必要となっているが、これを職場としての暗唱コンクールとして実施するという方法が考えられる。みんなの見ている前での英語暗唱の披露は、じつに強烈な「エピソード記憶」となるだろう。

現在は「まる暗記」を避ける風潮があるようだが、どのような習い事であっても最初の最初は「まる暗記」が必要不可欠なのである。重要なのは、きちんとした理論の裏付けのもとに、それをどのようなかたちで効率的かつ具体的に行うのかということだ。

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